朱の一滴

道すがら・・・



路傍に咲く、一輪の薔薇の花。


あまりの可憐さに、思わず写真を一枚。

周りがおとなしめの色に囲まれていたこともあって、


その鮮やかさが際立つ街の一角・・・



心奪われて、しばし見入る。


その強烈な朱の色を見て、


まるでその一角がまるまる、書作品になったような錯覚を覚えました。




書の作品は、作品となる文字そのものだけでなく、


「落款」(らっかん)


という仕事をして、完成品になります。




「落款」


とは、自分の名前を筆で書き入れたり、


印を押すなどすることです。



書の作品・・・


特にわたしが学んでいる一字書、小字数書の作品では、


この「落款」はとても大きな影響力を持ちます。



書の構成要素は、墨の濃淡や滲みやかすれ、色合い、


紙の色や質感、分厚さなどなど複雑に関係するものの、


基本的には・・・



紙の「白」

墨の「黒」



この二つというシンプルさ。



そこに添えられる強烈な


「朱」



印は朱色。


白と黒の世界に、朱の印は鮮やかで、


鮮やかであるが故に、作品への影響はとても大きいのです。



印泥(朱肉のこと)の色目、印鑑の大きさ、


朱文(文字が赤い)の印か白文(文字が白い)の印か、


そして何より押印する位置を、ミリ単位で吟味します。



そうしてやっと、作品が「収まる」わけです。



それぐらい強い力をもつ「落款」なので、


作品制作するときは、その位置もあらかじめ考えて創ります。


でもたまに忘れたり、どうしようもなかったりします(未熟者)。



白と黒の世界に命の灯火を吹き込む朱の一滴


「落款」

作品を鑑賞するときは、ぜひそれもあわせて眺めてみてくださいね。


よい作品であれば、その場所に押印した意図も読み取ることができ、


きっと新しい見え方をすると思います。



自分の拙い作品でしかも表装前で見づらいですが、参考までに!


全く作品の雰囲気が変わってくるのが、一目瞭然ですね。

Life is the very art.

芸術とは、生きることそのものである 生きることを心から謳歌したいと願い、書道を、文章を、落書きを、バイクやクルマを、日常を味わう 人生を美しい芸術作品にするために必要なことを、試行錯誤しながら考え、気づき、実践する そんな「にんげん 伊藤 義之」のHP

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